勝利の女神になりたいのッ!~第1部~


頭の中でアレコレ考えていると左近さんは私の頭をクシャクシャと撫でながら話しかけてきた。



「紫衣は俺の娘。それでいい。それならお前を守ってやれる。
生憎俺の妻は病がちで実家に住まわせている。だから俺とお前はいつも二人でいることになるが何も心配することはない。俺は家事もちゃんと出来るいい男だからな。」



ニッコリ微笑む左近さん。



左近さんの奥さんは体が弱くて実家で暮らしているのは本で読んだことがある。

奥さんの実家のお父さんがお医者様だったかな?

あまり鮮明な記憶ではないがそんな感じ?



「奥様のご実家はお医者様でしたっけ?早くお元気になられるといいですね。」



私の言葉に左近さんは大きな溜息をついた後ギロリと睨みつけるように私に視線を向けた。


背中が急にヒヤヒヤと冷たくなっていく。


左近さんのプライベートに触れたから?


怒らせてしまったのかな?



「紫衣、」


「は..はいっ!!」



名を呼ばれて体をビクつかせながら返事を返した。



「お前の知識はとても厄介だ。そのように何でも知っていることを話してはいけない。
今はお前は誰を信用して誰を警戒せねばならぬのか解っていないのだからな。
さきも注意したようにお前は極力話をするな。」



「はい...。」



怖かった。
左近さんの真剣な表情、強い口調、全部怖かった。


何でも思ったまま口にしちゃいけない。
それが私の命を脅かすから....。


怖い!!


左近さんの言葉の本当の意味をやっと理解できた気がする。


私は平成の人間。

ニュースの報道で殺人事件は聞いてきた。

だけど自分の身近で命の危険を感じることなんてない。


ここは戦国時代。


常に命は危険にさらされる。


もっと慎重に生きなきゃすぐに命は奪われるんだ。





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