勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
「まずは、紫衣。着物の着方をきちんと覚えなさい。」
左近さんとの暮らしはこの時代に馴染むことから始まった。
水道はない。
電気もない。
移動も馬か徒歩。
時計もガスも...
現代で当たり前のように使っていたものが全てない時代。
一から覚えるために私は毎日特訓のような生活を強いられた。
「左近さん、これはどうすればいいの?」
躓くたびに左近さんは丁寧に教えてくれる。
父親であり私の先生。
全てのことを左近さんに教わりながら生活する毎日はとても大変だったけど楽しく充実していた。
でもそんな幸せな時間も長くは続かなかった。
左近さんは城主の留守を守るためお城にいかなければならなくなったんだ。
「紫衣、俺は城に行かなければならない。」
解っている。
私はここで左近さんの帰りを一人で待てばいいんだよね?
寂しいけど...。
寂しすぎるけど...。
ちゃんと待てるよ。
「すぐに支度しろ。」
でも左近さんからは意外な言葉が掛けられた。
「はい、ちゃんとここで待ってます。」
そして私から左近さんに向けた見当違いな返事に左近さんは目を丸くしてから笑い出した。
「お前をここに一人置いていけるわけないだろう?サッサと支度しろ。」
笑いながら掛けられた嬉しい声に私は大きな声で返事して荷造りに励んだ。
私は一人じゃない。
左近さんがいつも一緒にいてくれる。
とても心強かったんだ。