平安物語=短編集=【完】
部屋に入って来られた中将様はしっとりと雨に濡れてしまわれていて、それ故に一層香が立っているのです。
少将の隣にいると、一際美しさが目だちます。
私達が居る几帳の側にお二人が座り、義母上はそっと身じろぎをなさいました。
「これはこれは、お義母君もおいでですか。
私のような者を、このように迎え入れてくださいまして忝(かたじけ)なく存じます。」
中将様が朗らかに挨拶なさると、
「中将様のようなお方を婿君としてお迎え出来ますことを、本当に嬉しゅう存じます。
この姫は、私が母代わりとなって慈しみ育てて参りました。
どうか幸せにしてあげてくださいませ。」
とお返事なさる義母上の、鷹揚で高雅な御様子と言ったら、私も大変に面目が立ちました。
「お義母君のお心にかないますよう、幸せにいたします。」