平安物語=短編集=【完】
だからなるべく内に籠もって、姫様のお側にいようと思うのですが、
「もし、大輔の君はどちらかな?」
なんて名指しで言われたら無視も出来ないし、他の女房に
「大輔の君は?」
と尋ねても、若い女房などは上手くはぐらかすことも出来なくて、おずおずと私を呼びに来てしまうのです。
そのたびに姫様はクスクスとお笑いになりますが、当の私としてはもう、溜め息に溜め息を重ねるような気持ちです。