平安物語=短編集=【完】



すっと、御簾がまくられる音がしました。


私の所の、御簾が。


なんだ、ただの尋ね人であったのかと、ほっと息をついて起き上がると、
差し込む月明かりで、少納言様の姿が浮かび上がります。


私の姿を確認して、安堵したように微笑んで入っていらっしゃいます。


一瞬固まりましたが、

「お、お人違いです。

これは大輔でございますよ。」

と申し上げました。



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