平安物語=短編集=【完】



そうしてお幸せに暮らし始めたお二人なのでしたが、たまに喧嘩もなさるのです。

主な原因は、殿が女房にお情けをかけたこと…

普通正妻と言えば、女房へのお情けなどはお戯れと見過ごされるものなのですが、この御方様は激しく嫉妬なさるのです。


殿が必死で宥めようとなさるのですが、納得おできにならない時などは、なんと、右大臣家に家出なさいます。

弘徽殿中宮様が宮中にいらっしゃる時でも、御方様は、右大臣様の北の方であり義理の姉君でもいらっしゃる椿の上とも親しくお付き合いなさっているので、世間には椿の上をお訪ねするという名目にしてあります。


右大臣様などは面白おかしくお感じになってお許しになるのですが、そのたびに殿は、血相変えてお迎えに行かれるのでした。



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