平安物語=短編集=【完】
***
この頃、西の対の一室が賑やかだ。
大君と紅葉の君は東の対、中の君は寝殿に居るのに。
毎度お馴染みの北の方に呼び出された時、思い切って訊いてみた。
「近頃、西の対を華やかに整えていらっしゃいますね。
どなたかがお移りになるのですか?」
「ええ。
宮様にお住み頂く部屋をしつらえているのです。
こんな事を申し上げるのも、捕らぬ狸のようで恥ずかしいことですが。」
その言葉を聞いて一瞬気分が高揚したが、警戒して念を押した。
「もったいないことです。
私などは、今の東の対の一室にお通し頂ければ十分ですのに。」
寝殿ではなく、東の対。
私の意図が伝わったのか、北の方は若干無愛想になった。
この人は、頭は悪くない。
このまま穏便に結婚できるのか、改めて気を引き締めた。
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この頃、西の対の一室が賑やかだ。
大君と紅葉の君は東の対、中の君は寝殿に居るのに。
毎度お馴染みの北の方に呼び出された時、思い切って訊いてみた。
「近頃、西の対を華やかに整えていらっしゃいますね。
どなたかがお移りになるのですか?」
「ええ。
宮様にお住み頂く部屋をしつらえているのです。
こんな事を申し上げるのも、捕らぬ狸のようで恥ずかしいことですが。」
その言葉を聞いて一瞬気分が高揚したが、警戒して念を押した。
「もったいないことです。
私などは、今の東の対の一室にお通し頂ければ十分ですのに。」
寝殿ではなく、東の対。
私の意図が伝わったのか、北の方は若干無愛想になった。
この人は、頭は悪くない。
このまま穏便に結婚できるのか、改めて気を引き締めた。
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