平安物語=短編集=【完】
「み、宮様!!」
慌てて止めようとする男を無視して、庭を突っ切って右近が居る所に向かった。
「右近。
紅葉の君は、こちらにいらっしゃるのか?」
「は…はい。
中に、確かにいらっしゃいます。」
右近の言葉に頷いて、上がろうとすると、
「宮様、困ります!」
と、先程の男が泣きそうな声で呼び掛けた。
何が何でも西の対まで案内するよう言われていたのだろう。
「事の次第を、主に話しておけ。
そなたに不備は無かった。」
そう言いおいて、階を上がった。