平安物語=短編集=【完】



「それで、中宮。」

再び呼びかけられて、私はすました表情を作って顔を上げました。

「知っての通り、この東宮は母を亡くして哀れな身の上となっています。

母の温もり無しで育つには、あまりにも幼いのです。

そこで、私の中宮であるあなたに、この東宮の母代わりをして頂けたらと思いまして。

どうか、我が子と思って可愛がってやってはくださいませんか。」


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