花火
佐久平駅に降り立ったのは、太陽も昇りきらない十一時を少し過ぎた頃だった。改札を抜けると、妹の莉那が待っていた。
「お兄ちゃんお帰り。あっちでお母さんが、車止めて待ってるよ」
そう言って、駅前のロータリーに目をやった。
「ただいま。お前まで迎えに来る必要なかったのに、暇人だな」
内心では嬉しかったが、昔からの名残で意地を悪くしてしまった。
「本当は嬉しいくせに。お母さん待ってるから早く行こ」
今年二十歳を迎える三つ下の妹は、少し見ない内にまた女性らしさを増していた。だが見た目とは裏腹に、中身は昔から殆ど変化がない。そんなことが、実家に帰って来たことを実感させた。
「拓哉おかえり。お昼はそうめんでいい?」
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