花火

「何そんな怒っているの？そんな大声だしたら近所迷惑よ」
あくまで冷静な貴美。近所迷惑？こっちの迷惑を考えずに何が近所迷惑だ。
「俺らは大学卒業と共に終わったんだ。それが今更何が彼女だよ」
さっきの勢いは影を潜め、呟く様な声だった。
「私達いつ別れたの？そんなこと、お互い一言も言ってないじゃないの？」
切れ長の目を、目一杯開いて聞き返してきた。
「大学を卒業して連絡もまばらになって、一ヶ月後には会うことも、連絡とることもなくなったじゃないか。いわゆる自然消滅したんだよ、俺らは」
最後の方は、自分でも聞き取れない程に小声になっていた。
「取り合えず、いつまで玄関で立ち話させる気？」
そう言うと靴を脱ぎ、肩の横を擦り抜けて部屋に入って行った。その一連の動作は華麗で、酔った頭では止めることが出来なかった。