花火
自分でも情けなくなるような声しか出なかった。貴美とのやりとりのお陰か、若干酔いは冷めていた。コルクを難なく抜くと、二つのグラスに注いだ。「乾杯」そう言い、小さくグラスを重ねた。
「その子とは付き合ってたの?」
過去形であることが気に食わなかったが、小さく頷いた。
「そっか、いつから付き合ってたの?」
一つ小さく溜息をつくと、質問を続けてきた。その口調はまるで、カウンセリングでもしているかの様で、なぜか素直に言葉が出てきた。或いは、誰かに話したかったのかもしれない。
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