花火
その瞬間、脳裏には二ヶ月前の光景が蘇った。
「お台場はパス、久々に横浜の中華街でも行かない？」
都内は避けたかった。いや、春香とデートした場所は避けたかった。そう思い、咄嗟に出たのが中華街だった。
「中華街…？別にいいわよ」
きっと、なぜお台場はダメなの？そう思っただろう。だが何かを察したのか、それ以上は何も言わないでくれた。
「じゃ、明日何時に、どこで待ち合わせる？」
細かい約束を果たし、電話を切った。貴美は女性としては珍しく、用件がある時以外は決して連絡を取ろうとしなかった。メールは手間がかかると言いあまり活用しないし、もちろん無意味な長電話なども好まなかった。大学時代からそうだった。楽と言えば楽だったが、少し寂しさを感じることもあったな、そんなことを思い出した。この空白の半年間も、そんな性格が災いしたのだろう。
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