花火
この四ヶ月あまりの記憶が、思い出が蘇ってきた。初めて春香と出会った渋谷のスクランブル交差点、待ち伏せをしたデパートの入口、他愛のないメールの数々、初デートで訪れたお台場、初めての手料理だった弁当、初めてのプレゼントのタッピー、海辺で眺めた夕焼け…。その瞬間を思い浮かべた時に、一つのことが脳裏を過ぎった。春香がどこに引っ越したかはわからない。だが、その行き先を知っている人がいた。そしてその人が住んでいる場所も分かる。千葉県木更津市、袖ヶ浦駅近くの、船溜まりという場所が近くにある町。いったい幾つの船溜まりがあるかはわからない。そして吉田と言う名字の家が、一体何件あるのかも。上手い具合に春香の実家を見つけられたとして、引っ越し先を教えてくれるかもわからない。だが、今ある唯一の手がかりはこれだけだ。行こう、パンドラの箱の底には、希望が残っていたはずだ。