花火
一しきり今日これからについて思考を巡らせると、本来考えなければいけないことを考えだした。なぜ春香は黙って引越しをしたのか、しかも誕生日の日に。考えても答えが出ないのは分かっていた。その答えに近づくために、今こうして電車に揺られているのだから。それでもそのことを考えずにはいられなかった。
借金があって夜逃げした。夜逃げする人間が、わざわざ隣近所に菓子折りを持って行く訳がない。実は他に付き合っている男性がいて、浮気がばれた。だからといって引越しまでは大げさか。許嫁がいて、両親に連れ戻された。これも時代にそぐわない。どれもあり得ない様でいて、どこかリアル差を秘めていた。
『恐怖は想像から生まれる。恐怖が想像を喚起するのではない』
村上龍がある小説で言っていた。大学時代に読んだ本だが、今でも覚えているセリフだ。
まさに今の僕のことだ。
< 218 / 427 >

この作品をシェア

pagetop