花火
土曜日の昼過ぎ、平井のマンションに家族三人で訪れた。こうして家族三人がこの場所に集まるのは、四年前の春の日以来だった。あの日はベッドにテレビにカーテン、洗濯機にテーブルに座椅子、食器類などを買い揃え、慌ただしくこの部屋に配置した。あの日以来苦楽を共にしてきたそれらを、今日はほとんど処分した。少量の衣服だけをまとめると、残りの物も処分することにした。私にはもう、そんな大量の洋服は必要なかった。旅行用のボストンバッグ一つ分の荷物だけを、持ち帰ることにした。両親は両隣の家に挨拶に行くと言い、私は何もない部屋に一人残った。やけに広く感じるその部屋で、全てが現実なのだと、初めて受け入れられた様な気がした。悪い夢ではなかったのだと。
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