花火
玄関を入って右側に洗濯機置き場と小さなキッチンがあり、左手にはトイレ兼風呂のユニットバスがあった。その奥には六畳の部屋が広がり、入口左手にはクローゼットがあった。正面の窓からは太陽の光が満遍無く入り込み、部屋を明るく照らしていた。そしてその外には十分な広さのバルコニーがあった。一目見て気に入り、この部屋に引っ越そうと心の中で決めた。参考までにと用意してくれた物件の見学を辞退し、店に戻り詳しい見積もりと、引越しの為に必要な書類を聞くことにした。
「一度見て決められるなんて、余程気に入っていただけたのですね」
バックミラー越しに問いかけてきた。はい、と微かにほほ笑み、曖昧に答えた。確かに気に入ったのはあるが、それ以上にゆっくりと探している時間がなかった。
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