花火
「拓哉さん、あなたのことは娘から聞きました。東京にいた頃に、お付き合いをされていたということで。あの子はこちらに戻って来てから、一度もあなたのことを話しませんでした。それでもあの子の様子を見ていれば、誰か大切な人を残してきたのでは、そう薄々感じていました。母親としてではなく、一人の女同士として。でもあの子からは、その様な話は一切出てきませんでした。当然私も気付かぬフリをしてきました。あの子の下した結論だと思ったからです。なので、あなたが先週現れた時に、やっぱりな、と思いました。そして、娘に会わせる訳にはいかないと。なぜでしょうね?あなたに娘を奪い去られるのが、恐かったのかもしれません」
そう言って苦笑し、一息着くと続けた。
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