花火
「でも、よろしいんですか?」
一つ小さな溜息と共に、更に小さな声が聞こえてきた。
「私達両親に出来ることは、これくらいしかないんです。あの子に、あなたといる時間を少しでも多く作ってやること、これくらいしか。父親には私から言っておきます。あの人もきっと反対しないはずです。なので、拓哉さんさえ良ければ…」
すがる様な眼差しだった、そして今までに見たことのない程の、力を秘めていた。
「わかりました、来週からはそうさせていただきます」
顔から力が抜け、優しい笑みがこぼれた。
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