花火
どの作業も丹念にこなしたが、まだ家を出るまでには三十分程余裕があった。しょうがなくインスタントのコーヒーを淹れ、タバコに火をつけ、朝のワイドショーを見るともなく眺めた。勿論内容に興味はなく、ただただ芸能人達がブラウン管を通した世界で笑ったり、驚いたりするのを眺めていた。それども時間は思った様に進まず、早く着く分には問題ないだろう、そう思い家を出た。
通いなれた駅までの道を、いつもの倍の時間をかけて歩いた。乗りなれた電車で新橋まで向かい、そこからゆりかもに乗り換え、待ち合わせのお台場海浜公園に向かった。
いつもは眠って過ごす車内も、今日は上手く眠りの世界に入っていけなかった。頭の中は、一ヶ月ぶりに再会する春香のことで埋め尽くされていた。諦めて目を開くと、窓の外の世界に今日一日の流れを思い描いた。
< 39 / 427 >

この作品をシェア

pagetop