神威異伝
日向は肩に鹿を一頭と槍を抱え、手には松明を持っていた。
十夜が溜め息を吐く。
「日向、お前遅すぎだっ―…」
「理緒は?理緒はどうしたんだ?」
辺りを見渡していた日向は、十夜が言い終わるよりも早く口を開いた。
その口調の早さに、十夜は目を点にしつつも答えた。
「あ、あぁ。理緒は焚き火ん所で火の番してるよ」
“火”という単語が十夜の口から出た瞬間、日向が目を見開いた。
……その時の日向は、顔が青ざめかけていた。
「お前…っ」
日向は小さく呟いたかと思うと、空いている方の手でいきなり十夜の胸ぐらを掴んだ。