恋心《短編集》
「コウ…」


「ん?」


浩一の声が、微かな振動となって、その背中から伝わってきた。



何故だろう。

とても安心できる。



息を深く吸い込むと、ちょっと埃っぽいような、男の人の匂いがした。



「コウの匂いがする…」



「なっ…バカ!急に何言ってんだよ」


「だって…」



もう一度、浩一の肩の辺りに顔を埋めて、その匂いを吸い込んだ。


「うわっ。だからやめろって!」


「やだ」


「…。乃亜…お前、そうとう酔ってるなぁ」



浩一は溜め息をついた。
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