恋愛スキル
「緋乃さんはお母さんが思っているよりずっと、心の綺麗なお子さんですよ?
両親の気持ちに応えよぅと必死で毎日頑張っています。自分の大切なモノを捨て、それでも認めて貰いたくて、彼女はただそれだけの為に懸命なんです。」
俺は彼女の気持ちを精一杯伝えた。
高ぶる感情を必死で抑えながら。
教師の俺が出来る事はこれくらいしかない…。
母親は視線を落としたままそっと口を開いた。
「私はあの子には、悔いのない立派な人生を歩んで欲しいだけです。
人に恥じる事ない道に進んで欲しい。
その為に厳しく育ててきたつもりです。それもみんなあの子の為になるのですから。」
「本当に、それが彼女の為だと思っているのですか?」
俺の言葉に母親は鋭い目つきで俺を睨んだ。
「あなたに家庭の事をあれこれ口出しされたくはないわ!」
ガラ…
緊急治療室のドアが開き、医者が母親を見つけると
「松浦緋乃さんのご家族の方ですか?検査の結果とお話がありますので…。」
と、母親を招き入れた。