恋愛スキル


「え?……ああ、その事なんだけどよ……」


大輔は、急に真剣な顔付きで視線を床へと落とすと、静かに黙りこんでしまった。


「どうかした?大輔何か変だよ?」


「いや……何かアイツ忙しかったみたいでよ?手紙渡せなかったんだ。本当ごめんな。

それより早く治して二学期から学校来いよ?アイツも待ってると思うし」

「そっか……うん、有難う」


小さく頷く私を確認すると、じゃ!と慌ただしく大輔は病室を出て行った。


忙しかったかぁ……


そうだよね……


夏休みとはいえ、先生達はきっとやることが沢山ある筈。



青々とした夏の空に、緑の葉が鮮やかに映る、華やかな外の世界。


ついこの間まで私もいた筈なのに


随分昔に思えてきて、何だか惨めな気持ちになった。






< 162 / 168 >

この作品をシェア

pagetop