コンビニラブ
ドアが開いた途端、アンの部屋からは良い香りがしてきた。


玄関には大量の靴の箱が、きちんと積み重なっていて、さすがファッションモデルと言った感じだ。


クローゼットに納まりきらない衣類は、ポールスタンドにかけられていて、
無造作に置かれた雑誌と、キャンドルが目についた。


(コレの匂いかぁ。)

「ちょっと、ジロジロ見ない!」

「あ、案外片付いてんだなぁと思って。」

「片付けたに決まってんでしょ〜。盗まれたらヤだもん…下着とかぁ。」

「…さっさとやっちゃおうぜ。俺、飯食って、バイト行かないとだから!」

「うん。コレなんだけどね。」

「開けてもねーのかよ!」

「来たばっかなの!」

「ったく〜。…今付いてんのと同じように付けりゃイイんじゃん。」

「え〜ホントかなぁ?」

「…」

「そうだ!外したら、ソレ、持ってく?」

「え?」

「持ってるの?」

「いや、ビデオしか…」

「じゃあ、持ってって!処分するのもお金かかるから!」

「ホント?」

「うん。いつもお世話になってるから!お中元です!」

「ありがとう!(ホントについているなぁ、最近。)」


一生分の運を、今、使いきってしまうんじゃないかと考える慎重な伸治は、
こんな時こそ、浮かれないで気を付けようと思うのだった。
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