私と静電気。[短編です]
∮2/私と出逢い。






目先に"私立 聖ミサ学園"と書かれた、大きな正門が見えた時だった。
自分の足音の後に、違う足音が聞こえる。
頭では分かっていたつもりが、体はまだ現状に追いついていなかった。
そのときだった。


「…ぃ……おいってば!」



突然、笑みは誰かに引き止められ、声をかけられた。
強く掴まれた腕が軽く痛む。頭すら、事態に追いつかない。だからか、笑は何故か声がでなかった。



「お前さ、アレだろ。あの…ほら。遅刻常習犯のさ、2年C組の!」



そう笑顔で淡々と話しかけてきたのは、知らない男の子だった。
第一印象は、"うるさい"
とにかく声が大きいし、何より、よく初対面の人間に対してこんなに気安く話しかけられたものだ。


…ていうか、この男の子はいつまで私の腕を掴んでいるつもりだろう。
痛いんですけど。
ねえ、痛いんだってば。



幸い、遅刻しているお蔭で周りに目撃者はいない。
この学校は広大な敷地のために周りに住宅はない。
だからとても静かでひと気がないのだ。
風の音がやけに大きく聴こえる。
そんな並木道なのだ。



風が木々を少し揺らした時だった。
笑は我に返り、思わず捕まれていた腕を振り払った。



「ちょっ…ちょっと、あなた誰よ。何で私のこと知っ…知ってるの?」



これは誰が見てもわかる、笑の強がり。
本当は"男の子"が怖くて、少し虚勢を張っただけなのだ。
気が強いのに、度胸はないらしい。



「ぶ…無礼にも程があるわ!私は遅刻してるの…。こんな所で時間を食われる訳にはいかないのよ…っ!」



少し苛立ち始めたその時。
それに気付いたのか、少年が再び言葉を発した。
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