着せ替え人形
内心そんなことを言われたから、すごく焦ってしまった。
だけどそこは得意のポーカーフェイスで切り抜ける。
「どうりで今日はセットも凝ってる訳ですよ」
いつもの何の変哲もないダブルベッドが、今日はおろしたての真っ黒いシーツに包まれ、全く違う顔になっていた。
「だろ?
赤と黒のコントラストが印象に残る作品にしたくて」
斬新なセンス。
カメラの準備が終わると、彼がこちらに近づいてきた。
そしてあたしの目の前で止まると、顔を覗きこむ。
「ちゃんと注文したとおりのメイクで来てくれたね」
「もちろんですよ」
ここまで顔が近いと、さすがにドキドキして目が合わせられなくなる。