着せ替え人形
手探りで電気を付けて、彼女をリビングに案内して椅子に座らせた。
「長旅お疲れ様。
何か飲む?」
部屋の中を興味深そうに見回す彼女に尋ねた。
「いえ、結構です。
長い運転でお疲れなんですから、次は一ノ瀬さんがお休みする番ですよ。
その間に着替えて化粧もしますから」
そう言って彼女は微笑んだ。
…じゃあお言葉に甘えようかな。
「ありがとう、そうさせてもらうよ。
着替えたりするのはどの部屋使ってもいいから、おわったら隣にある和室まで起こしに来て」
「わかりました。
途中でのぞいちゃダメですよ?」
無邪気な笑顔で彼女が言う。
「はいはい、完成してからのお楽しみにしておくよ。
じゃあおやすみ」
そう言って部屋を出て、襖を開いた。
しばらく取り替えていない畳の匂いがする。
押し入れから枕と掛け布団だけ取り出して畳の上に横になると、運転疲れのためかすぐに眠ってしまった。