着せ替え人形
「まあとりあえずここで話すのもなんだし、上がってよ。
家の中には誰もいないから」
「あれ、ご実家なんですよね?」
「うん。
両親は仕事が忙しいから、ほとんど家にいないんだよ」
そう言いながらキーケースから鍵を取出し差し込む。
そして捻るとガチャンと音がした。
当たり前だけど、ほんとに鍵が開いたことに少しだけ驚いてしまう。
「はい、どうぞ」
ドアを開けて彼女を中入れた。
「おじゃましまーす…」
少し遠慮がちに彼女がそう言った。
部屋の中の様子は、俺がこのうちを出たときからほとんど変わっていなかった。
ただ、ひんやりした空気とほこりっぽい匂いのせいで、暖かい家庭の余韻も何もなくなってはいるけど。