金色の花
金の薔薇
あちこちから黒煙が細く立ち上る中を、一人の少年が歩いていく。

次期国王となるべく定められた彼は、父の言に従ってこの地に初めて足を踏み入れた。

崩れ落ちた城壁の下から、若い男の手が覗いている。
土をつかんだまま硬直した指を目にしても、少年の漆黒の瞳にはいかなる表情も浮かばない。

血の匂いのする風が砂塵を巻き上げる。
どんなに目を凝らしても、見渡す限りの瓦礫の原に生きているものの痕跡は見あたらない。
それでも少年は、白い大理石を敷いた回廊を、ためらうことなく進んでいく。
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