HONEY&ROSE

魅惑の香り

庭園には色とりどりの薔薇が咲き乱れていた。種類も数十種類あるだろうか。

「綺麗。香りも・・」

タマコはすっと香りを吸い込んだ。
ほのかに甘い 魅惑的な香り。さっき多岐川からしたのと同じ香り。

ふいに多岐川はタマコがしていたヘアピンを取り 黄色い薔薇を一輪摘み
あっという間に薔薇の髪飾りをつくってみせた。

タマコ「♪」

すっと右耳上に薔薇の髪飾りを挿し、多岐川は言った。
「ずっとタマコとここに来たかったんだ」

「どうして」
とタマコ。

「まだ内緒。」

多岐川って案外意地悪だ。

そういうと手を取り園内を少し歩いたあと一枚の写真を見せてくれた。
みてみると茶色っぽいトラ猫が写っていた。
眼がまんまるで体は華奢だ。
「ネコ」

「うん。昔飼ってた たま」

「同じ名前。」

「タマコみてるとさなんだか思い出しちゃって。そしたらだんだんタマに見えてくるんだよね。きみがさ。」

「わたしが猫のたま?」

「元々近所にいた野良を保護したんだけど、おいでって言ったらすぐ懐いて膝に乗ってきたんだ。
のんきなやつでさ、他の猫にえさとられてもぜんぜん平気なの。」

くしゃっとわたしの頭を撫ぜる。

「こうやって警戒心なくついて来るところとか、まじそっくり」

屈託のない笑顔で多岐川が笑う。

「だ、だ、だっていい香りがしたんだもん。」
性格を見抜かれて動揺してどもってしまった。

「かつおぶしのにおいか?」
多岐川が茶化してまた笑う。

・・・。なんだかその笑顔に心臓打ちぬかれた気がした。
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