REGRET ―忘れられない人―
兄貴
兄貴が教師をしている高校。
門をくぐり、坂道をのぼる。
ここで、兄貴と直さんは出逢った。
結婚式の時、直さんが言ってたっけ。
遅刻しそうになった私を追いかけてくれたことが思い出だって。
兄貴はどんな気持ちで直さんを追いかけたんだろう。
まぁ、教師だから、相手が誰でも同じことをしたと思うけどさ。
最初からやっぱり、ビビビって何か感じてたのかな。
部活動をする生徒の声を聞きながら、俺は受付のノートに名前を書いた。
校舎ってどこも似ていて、ちょっと切なくなる。
俺が思い出すのは中学。
こんな風に、廊下が長くて、渡り廊下から運動場が見えたんだ。
そうそう。
噴水もあったっけ。
俺は、花帆と抱き合った中庭を思い出す。
噴水横のベンチに座る高校生のカップル。
戻れるものなら戻りたいな。
俺も……
でも、あの時別れたからこそ、今がある。
後悔したからこそ、俺は花帆の大切さを知ったんだ。