REGRET ―忘れられない人―
トントン
『体育教官室』と書かれた部屋をノックした。
兄貴の字だろうか。
『必ずノックをすること』と書かれていた。
教官室には誰もいないようなので、俺は窓から暗くなった校庭を見た。
野球部の練習用のライトであろうか。
校庭の半分だけが明るく照らされていた。
兄貴がすぐに目に入った。
でかいってのもあるんだけど、存在感がある。
直さんが大好きだって言う『白いジャージ』を来た兄貴が、陸上部の生徒に何か話していた。
兄貴ってすごいよな。
ちゃんとどれも完璧で。
直さんのことも大事にしていて、仕事もちゃんとしてさ。
結婚式が終わったばかりだというのに、遅くまで仕事して。
でも、兄貴は幸せそうだ。
兄貴は教師に向いている。
この仕事が好きなんだろうな。
ここが好きなんだろうな。
直さんと出逢ったこの場所が。