雨夜の月

‥始まりの場所‥

雨宮 美月[アマミヤ ミツキ]

女25歳。


百貨店勤務7年。


一人暮らし5年。


彼氏と別れて2年。




寂しさよりも、焦りに似た毎日。


「四捨五入したら30歳」


この領域に足を踏み入れた途端、言い訳の様な言葉が口をつく。


「彼氏欲しいと思ってないから」

「彼氏は作るものじゃないから」




と言ってみるものの、実はとても焦っていた。


今の自分が結婚に繋がっていくのか…。


高校からの男友達。

東雲 嵐[シノノメ アラシ]

ヤツは、こう言う。



「焦ってるの丸見えだぜ?」



いつも笑い飛ばされて、いつも慰めてくれる。



「最後に誰もいなかったら、俺がもらってやるよ」


「遠慮します」




時々一緒に呑んで、漫才の様な会話で楽しい時間を過ごす。


身体の関係は、一度もない。


嵐には、高校から付き合っている彼女がいる。


私も知っている彼女は、嵐の三歩後を歩くタイプで、私とは正反対だ。


「お前が結婚するまで、俺も結婚できないよ」



この言葉が、今の私の支えになっていた。


< 2 / 65 >

この作品をシェア

pagetop