雨夜の月
嵐とはクラスが違ったのに、共通の友人がいた為に仲良くなれた。


何故、嵐を目で追っていたのか、覚えていない。


ただ、気付けばいつも探して、いつも見ていた。


嵐に彼女がいると知った時、仲良くなんてなれないと、勝手に思い込んだ。



まさか話せるようになるなんて。

予想も、予感も、全くなかったんだから。



共通の友人。

濱田 千里[ハマダ チリ]

入学してからの友達で、嵐と同じ中学だと言った。



嵐に彼女がいることは、千里も知らなかった。



だが、千里は私の目を、意識を、隣で見ていて気付いたんだろう。


突然だった。

千里が嵐に声を掛けた。


「嵐!!」


教室移動中らしき嵐に、その空間で、一番大きな声で呼び止めた。


「あ?声デケーよ」


千里は私の左腕を引くと、嵐に近寄り


「私の友達なんだ」

と笑って言った。


心の準備なんて何処かに置いたまま、何を話していいのか一瞬言葉に詰まった。


「だから何なんだって言いたいけど、宜しく」




彼は優しく微笑んで、長い廊下の先へ消えていった。


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