雨夜の月

‥一番星‥

文化祭後の学校は、全てがダルく感じる。


「次は体育大会かぁ」


教室の掲示板に貼られた予定表を前に、千里と指で辿った。


「体育大会は嫌だな」


私も同じく。


「何て顔してんだよ」


突然、掲示板横の扉から嵐が声をかけてきた。

千里と私は嵐を見て、溜め息をついた。


「何で溜め息…?」

「別に…」


声が揃って吹き出した。


「あ!!そうだ!!体育大会の日、俺誕生日だから」


そうなんだ…。
初めて知った…。
秋生まれなんだ嵐。


「だから何なのよ」


千里の冷たい視線に、嵐は余裕のある態度で


「別に気を遣わなくていいから」


と笑って、その場を離れた。



誕生日、きっと彼女とお祝いするだろう。


またひとつ、嵐のことを知った。


またひとつ、忘れられなくなる。



その日の放課後、千里がバイトの面接に行くとかで、付き添いで千里の地元に行くことになった。

千里の地元は、嵐の地元。


少し緊張しながら、嵐の育った街へ向かった。


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