雨夜の月
千里の面接先は、スーパー内にあるクレープ屋で、面接の間はスーパーの中の本屋で時間を潰した。


漫画や雑誌を立ち読みしながら、千里を待っていると


「あれ?」


嵐の声だ。

振り向くと、私服に着替えた嵐が、脇に何冊か漫画を挟んで、何とも言えない顔で立っていた。


「どしたの?お前」

「千里の面接の付き添い」

「子供かよ」

「緊張するからね」

「そっか」


話が途切れる。

彼女の話も嫌だし、かと言って何を話せばいいのか、

「俺も一緒に待っててやるよ」

そう言って嵐はレジに向かい、支払いを済ませて戻ってきた。


「こっち」


嵐に促され、本屋を出て少し歩くと、長椅子が何台か並んだ場所に着いた。

先に腰を降ろした嵐の隣。

二人くらい座れるスペースを空けて、私も腰を降ろした。


「千里…分かるかな」

「大丈夫だろ。本屋からも見えるから」


制服じゃない嵐。

変な緊張と、恥ずかしさと、色んなものが混ざって、心臓が飛び出しそうだった。


「なぁ…離れすぎじゃね?」


空けてたスペースを、嵐は顎で指した。


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