雨夜の月
嵐の彼女。

崎山 薫[サキヤマ カオル]


彼女は書道で秀でていて、色んな賞を獲得していた。

それは全校集会で逐一紹介され、学校内では勿論、ちょっとした有名人だった。


「嵐には似合わないね」



千里の最初の言葉。


事実、私もそう思った。




あの嵐と彼女…何処にそんな接点があったんだろう。


そんな風に思った。


思ったけれど、噂が流れた時、否定をしなかったという嵐。

女子たちの落胆の声は、暫く消えなかった。



そして知った。

嵐を見ていたのは、私だけじゃないんだと。





あの日、千里に紹介され、嵐の中に『私』と『他人』の区別が生まれた。


だから友達になれた。


落胆する女子にとって、これほど羨ましいことはない。



『充分じゃないの!!』

と千里に感謝した。



千里に紹介された翌日、偶然、昇降口で朝から嵐に会った。

「おはよう」を言いそびれ、後悔がグルグル頭を回っていると



「名前、なんていうの?」


嵐から声を掛けてきた。


「美月。雨宮美月」



「キレイな名前してんね」


嵐との初めての会話だった。



< 4 / 65 >

この作品をシェア

pagetop