ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
 
「そろそろ帰るぞ」


ベッドに腰かけていたミナキくんが立ち上がった。


「え!?

もうそんな時間!?」


壁にかかっている時計に目を向けた。


短い針は5と6の間を指している。


「でも、私のカバン教室……」


「持ってきた」


ミナキくんは教室にあるはずの私のカバンを持っている。


「取ってきてくれたの……?」


「だって起きてからカバン取りに戻ったら時間かかるじゃん」


あ……確かに。


「ありがとう」


私がペコッとおじきをすると、ミナキくんは少しほっぺを赤くして髪をかきあげた。


「あ、そだ!

私、銀ちゃんに連絡しなきゃ!」


「銀ちゃん……?」


「うん!

あれ?

ミナキくん、銀ちゃんのこと知らない?」


「銀ちゃんって……銀爾?」


「そだよー」


私はポケットから携帯を取り出して、アドレス帳から銀ちゃんの電話番号を探した。


「私、毎日銀ちゃんと帰ってるんだ。

だから今日は一緒に帰れないって連絡しなきゃ。

ちょっと待っててね」


携帯に耳を当てて、コール音を聴く。


4回目のコール音が響いたところで、電話の奥から聞き慣れた低い声が聞こえた。


 
< 120 / 214 >

この作品をシェア

pagetop