拝啓、ばあちゃん【短編】

5

水面にキラキラと反射する太陽の光。


時折吹く、生暖かい風。


「ばあちゃん…」


俺は小さく呟くと、手首に光るロレックスの腕時計を確認し、ゆっくりと立ち上がった。


そろそろ時間だ。


父さんと会うのは何年ぶりになるだろう。


周りの人間は俺の姿を見て何と言うだろう。


ホストをしているという事を、どこかで耳にして知っているのだろうか。


それくらい、ここ数年俺はこの場所を訪れる事を避けていた。


黒染めが落ちて金色になった痛んだ髪に、そっと手をやる。


でも、きっと。


ばあちゃんなら笑ってこう言うだろう。


「優ちゃん、外人さんみたいね」、って。


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