拝啓、ばあちゃん【短編】
何でそんなに落ち着いてられるんだ。


何で親父は呑気に家にいるんだ。


ばあちゃんの足でそんな遠くに行けるはずないだろ。


近所を徘徊しているならすぐ見つかるはずだろ。


そんな次々と浮かぶ疑問を、俺は怒鳴りながら親父にぶつけた。


「お前に連絡がつかないから待ってたんだ。さっき警察に捜索願も出した」


そう言って、頭を抱える親父。


ばあちゃん…


気付けば俺の足は玄関に向かって走り出していた。


背中に親父の声が聞こえる。


でも振り向いている暇なんてない。


俺は勢い良く玄関の扉を開け放ち、さっき乗って帰って来たばかりの自転車にもう一度またがり、焦る気持ちでペダルに力をこめた。


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