Baby Doll
食器を洗っていると、リビングのドアが開いた。
顔を上げると部屋着に着替えた姉が立っている。
「お姉ちゃん?どうしたの?眠らないの?」
「ええ、やっぱり悪いもの。手伝うわ。」
そう言うと、姉はぐるりとあたしの横にまわり、あたしの持っていたスポンジとグラスを奪い取った。
「お姉ちゃん、皿洗いなんかしたらネイルが…。」
「いいのよこんなの。あのボンボン彼氏にサロンに連れてってもらえばいいんだもの。今日のドレスだってあたしがねだったらすぐ買ってくれたわ。しかも他にドレス三着にエルメスのバッグにネックレスまでね。ふふっ、笑っちゃうわ。本当男って愚かしいわよね。」
そう言う姉の表情は、笑っているけど目は笑っていなかった。
あたしは静かに目を伏せて頷いた。