三国志疾風録
 「貴様等は老人を敬う事すらできんのか!」

 「黙れ! お前達は何を売ってやがるか!」

 「てめえらみたいに油を売ってるわけじゃないぜ」
 異相の女も拳を鳴らして立ち上がった。後ろの少女は死んだように眠ったままだ。

 「俺達のどこが油問屋に見えるんだコラ。目が悪いのか大女」

 「なんだそれ。お前は頭悪いのか? それともわざとボケてるのか? だとしたらスベってるそ。油なだけにかなり滑ってるぞ小役人」

 「やめておけ張飛。皮肉も通じん馬鹿を相手にしても仕方あるまい。お前の油にかけた表現も二十五点てとこだ。掘り下げる話題ではない」

 「厳しい採点じゃねーか関羽」

 「三十点満点でだ」

 「そりゃどーも。さて行くか。この村から出て行けばいいんだろ」

 「行かせるわきゃねーだろ! 塩を売ったとなりゃ賊扱いだ。斬られても文句言わせねぇ」

 五人組の役人が一斉に抜刀して関羽と張飛を囲んだ。相手が丸腰と見て、狩りでも楽しむような雰囲気が漂っている。

 「おい大女、裸になって許しを乞えばお前だけは助けてやる。俺はでかい女が好みだからよ~」

 「そいつは光栄のキワミ、アッー――!」

 張飛が役人の腹に掌底を打ち込んだ。捻りも加わり凄まじい勢いで吹き飛び、そのまま白目を剥いた。

 「張飛!」

 「すまん。女扱いされた上にセクハラときたら我慢できん」

 「貴様等! この場で公開処刑決定したぞ!」

 「あん? 俺と関羽殺るにゃー、後一億人足りねーぜ」

 「ぬかせ!」

 残りの四人が二人一組となって関羽と張飛に襲いかかるが、一瞬にして殴り倒された。戦闘というより運動でしかなかった。

 「やるねお二人さん!」

 周りから大歓声が上がった。日頃から多くの者が役人のやり方に不満を抱いていたのであろう。

 「外道な役人は漢道を往くこの関羽が成敗いたした! 安心して売買されるがよい。張飛、役人供には塩だ塩を撒いておけ!」

 関羽は5人の役人を一人で担ぎ上げ、町人達に見せるかのように道の真ん中をゆっくりと歩き、往来の最も激しい通りに降ろして並べて吼え声を上げた。

そこ行為にどんな意味があるかは連れの張飛にも判然としないが、町人は大喜びだった。
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