only one
「ここにいらっしゃったんですか?」
トレーを片手に持った仲村さんが私の後ろに立っていた。
「ごめんなさい、勝手なことしてしまいました。」
振り返ると同時に私は仲村さんに頭を深く下げた。
「気になさらないで下さい。この屋敷の中は自由に使ってもらって大丈夫なのですよ。」
そんな風に言われても恐縮してしまう。
モジモジと落ち着きなく視線を彷徨わせる私に仲村さんは優しく微笑んでから温室に向って歩いていった。
そしてドアを開けると大きな声で叫んだんだ。
「マツ。いるんだろ?」
声を掛けながら温室の中に足を踏み入れる仲村さん。
仲村さんはガーデンセットにトレーを置くと突っ立ったまま動けない私の側に来て温室の中に手を引いて入れてくれた。
外から見るよりもずっと鮮明な色を放つ花に私の目は輝いた。
母の大好きだった蘭の花がたくさんあった。
白を基調として鮮やかな色とりどりの蘭の花。
「とても綺麗...。見たことのない花もたくさん.....。」
自然に口から零れ落ちた言葉。
「あったりめぇだ!!」