愛した名前
試合は順調。
1セットを取って、2セット目の途中の時、
「わっ」
誰かが上から私の顔をタオルで軽く叩いた。
タオルをよけながら後ろを見ると、汗をかいたけいが立っていた。
「俺の応援は?」
「あ・・・試合、終わっちゃった?」
私はやっちゃったという顔で聞く。
「終わった。勝ったからまだあるけど。」
「そっか。」
私はまた偽の笑顔をつくる。
駄目。
今日はいくら好きな人の前でも本物の笑顔は見せられない・・・。
けいは少し黙って、口を開いた。
「ちょっと来て」
「え、」
言ったままスタスタと私を置いて体育館を出るけい。
「ちょ、ちょっと待ってよ・・・!」
私は走れない足で急いでけいの後を追う。