捨て猫に愛をください
「ハッ・・・ハイト・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
煙草を差し出してきたハイトの左手の小指が,根元から無い。
「ハイト,これっ・・・」
驚きを隠せないテツを見てハイトは悲しそうに顔を歪めた。
「テツぅー・・・何でも見た目で決めつけるのはよくないぜ〜。」
真っ赤な髪をかきあげてフツフツと笑いが込み上げてくるのを堪えているハイト。
そんなハイトがテツの目には,なぜか悲しげな捨て猫に見えた。
「聞いて驚いちゃダメだぜ」
ニタァ
と笑ってくるハイト。
テツは異様な雰囲気に呑まれてコクコクと頷く事しか出来なかった。
「───…俺,実は昔,イジメられててさ。」
「・・・!」
「この指は俺をイジメた奴等にやられた。」



あれは中学1年の春。
入学早々,イジメが勃発した。
「あれ,ハイト坊っちゃん〜良いシャーペン使ってるねー」
「サンキューハイト。」
何を話かけられたのかわからないくらいの早さでそうはやし立てて俺のシャーペンは奴等に奪われた。
そのシャーペンは,父親がロンドンに行った土産らしく,日本円で約十五万するらしい。
けど俺は興味無かったし,シャーペンくらいなら・・・と思って最初は見逃した。
それがマズかった。
その頃俺は喧嘩もしたことなかったし,周りの男子が使う汚い言葉にもビクビクしていた。
そのくらい弱い奴だった。イジメはエスカレートして,シャーペンやノートから,上履きや上着と,品物が変わってきた。
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