―雪女郎― 凪雛
「ひ、氷雨姐さん・・・雪洞ちゃんが悪いんじゃありんせん。」







織閖が必死に氷雨に訴えた。







「雪洞、寿から手を離しんさい。座敷持ちが、新造相手に何をやってるんだ。」







凪雛が冷静に言った。






雪洞は乱暴に、手を離した。






寿は着物を直した。







「あとの奴らは座敷に戻れ。」







氷雨の声で、集まった遊女や禿がぞろぞろと自分の部屋に後退していった。







六人だけになった。






「三人ともわっちの部屋に来んさい。呉葉と氷雨も頼む。」







凪雛が言った。







「織閖、雪洞を連れてきておくんなし。冷静さを失っているようだ。何が起こったのかもアンタが説明しておくんなし。」







織閖は、雪洞の肩を抱いて静かに頷いた。







その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
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