ときどき阿修羅!!
 日本刀って、日本刀だよね?
 いや、うん。
 だってさっき見たもん。

 ……あれって、本当に本物だったんだ。

 私は、リセさんの右手につかまれた濃い紫色の細長い袋を見た。

 使う方じゃなくて、作る方!?

「日本刀といえばタマキ、これ、忘れ物」

 リセさんは右手を胸の前に掲げる。

「ほんとだ。やっぱり、律ちゃんのところにおいてきちゃったんだ」

「置いてきちゃったんだ、じゃないだろ!?
お前なあ、職人としてその感覚はまずいだろ」

「そう?
出来上がっちゃうと、どうでもよくなっちゃうんだよね」

 タマキさんは、ありがとう、とリセさんに手を伸ばす。

「ちょっと待った!
いいか、タマキ、ここに置く。
置いてから、10秒数えるまで動くなよ」

 リセさんは、左の手のひらをリセさんに向けながら、少し離れた縁側の上に置いた。

「なんだよ、10秒って。
まあいいや。おれ、拭い紙とってくる」

 タマキさんは、少しムッとした顔でそう言いながら立ち上がり、部屋の中へ入っていった。

 随分と後ろの方から、リセさんの溜め息が聞こえる。

 あれ? リセさんいつの間にそんなに後ろに下がってたんですか?
< 21 / 101 >

この作品をシェア

pagetop