Rusting rail <短>
16歳、夏



肌を突き刺す、鋭い夏の陽射し。

どこにいても、どこまで行っても、その光は私を逃がさない。



この町は、遮るものが何もないせいで、眩しすぎる容赦ない照り付けが、

私の体を、ジリジリと音を立てて焦がしていく。



辺り一面、180度どこでも見渡せる田んぼ道の中心を、私は今日も気だるい足取りで歩く。


土の地面に足を付ける度に、草の間からピョンピョンと、何の意図もなく姿を現す虫たちが、

収穫前の高く伸びた稲穂の中へと、また消えて見えなくなる。



ここは、典型的な田舎町。

誰が見ても口を揃えて言える、田舎町。



もちろん、テレビくらいはある。

きちんと舗装されたコンクリートの道だってあるし、当然車も走っている。

大抵のものを揃えることのできるスーパーだって、車で数十分の距離に立っている。



普段の日常生活には、何の支障もないのだ。


普通に生きるだけならば。



ただ、テレビの中にあるような、首が痛くなるほど背の高い建物は、どこを探したって見当たらないし、

酔うくらいの人混みに、巻き込まれることもない。



そして夏は、蝉の鳴き声が耳を塞ぎ、そのノイズが蜃気楼のようになって、目を眩ませる。


冬は、生まれたままの姿で吹き込んでくる、正しい意味で冷えた風が、唇を震わす。



要するに、たまにテレビで見かけるような、とてつもなく辺鄙な過疎地というわけでもなく、

“都会”と聞いてイメージするような場所でもない。



いわば、中途半端な田舎町。

その表現が、一番しっくりくるのかもしれない。



驚きの事件もなく、毎日出くわす人は、見知った顔ばかり。


胸を躍らせる出来事が、起こりえない町なのだ。

ただ普通に生きることしかできず、それを強いられていることすら気付けないような……



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