俺だけの愛しい妹

「もしもし……?」

問いかけても、返事なし。

「間違い電話ですか?」


それでも無言。

切ろうと、携帯から耳を離したそのとき。


『あぁ、久しぶりに聞く声だ』




よく、聞こえなかったが、確かにそう言っていた。

鳥肌が全身を駆け巡る。


昔よく聞いた声。

少し低くなっているが、変わっていない。


『結菜、後振り返ってみて』


結菜と呼ぶ人。

マサトと、友達と……“アイツ”。

もう二度と関わることのないと思っていた人。


あたしは恐怖に震えながら、後ろを振り返った。





「結菜」




そこには、

優しく笑う、お兄ちゃんがいた――――……







【end】



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